β(ベータ)の問題点
先日はトヨタ自動車のTOPIX対比β(ベータ:マーケット・インデックスに対する個別証券の感応度)について、Excelを使って計算する方法について紹介しました。
過去記事:ExcelでTOPIX対比の株価β(ベータ)とα(アルファ)を求める
ベータが分かることで、CAPM(キャップエム:資本資産価格モデル)を使い期待収益率(企業側から見れば株主資本コスト)を求めることが出来ます。
ただベータって自己資本比率によって変動してしまい、借入比率が高いほど高ベータになってしまう特徴があります。
以下ではより「本質的な事業リスク」を算出出来る、アンレバードベータについて紹介したいと思います。
アンレバードベータとは?
財務リスクを考慮したベータ(レバードベータ:βL)に対し、財務リスクを除いた(事業リスクにフォーカスした)ベータのことを「アンレバードベータ:βu」と呼びます。
そして、レバードベータとアンレバードベータは、下記式のような関係にあります。
ただし、
- 税率:t
- 負債(簿価):D
- 自己資本(時価):E
例えば前回求めたトヨタ自動車は、TOPIX対比のレバードベータが1.19でした。
当時の有利子負債(D)は26兆円、時価総額(E)は25兆円だったため、D/Eレシオは1.04倍であり、税率が50%としたときのβUは、
となり、トヨタ自動車の事業リスクとしては、TOPIX(上場企業平均)のリスクより低い、ということが分かりました。
同業他社を比較する
アンレバードベータを同業他社で比較することで、その企業が市場からどのように見られているのか相対的に判断する、一つの材料となります。
例えば2017/1月時点のデータとして、完成車メーカーから
- トヨタ自動車
- 日産自動車
- マツダ
の3社のアンレバードベータを求めるため、下記表で整理しました。(税率を50%とし、レバードベータはロイター参照しました)
企業 | レバードベータ | 負債(百万円) | 時価総額(百万円) | アンレバードベータ |
トヨタ自動車 | 1.16 | 29,339,411 | 28,499,258 | 0.77 |
日産自動車 | 1.04 | 12,232,898 | 5,684,799 | 0.50 |
マツダ | 2.09 | 1,571,678 | 1,504,186 | 1.37 |
求められたアンレバードベータを比較すると、
トヨタより日産の方がアンレバードベータが低い
→トヨタはローン事業比率が高いため
マツダはアンレバードベータが高い
→規模・製品ラインナップが比較的小さく、淘汰される可能性があるため
など、業種の中でその企業が抱える事業リスクや、収益構造の違いなどを数値で確認し、考察することが出来ます。
アンレバードベータの使い方
アンレバードベータが使われる場面としては、未上場企業のWACCを求めるときです。
未上場企業は株価データが存在しないため、レバードベータを測定することが出来ません。
そこで、
- 上場企業のアンレバードベータを計算
- 未上場企業Aの業種平均を、A社のアンレバードベータとして使用
- A社のレバードベータを求める
- CAPMを使い株主資本コストを計算
- 負債コストと株主資本コストから、WACCを算出
というプロセスを経て、WACCを求めます。
WACCはその企業が出すべき利益の指標にもなるため、A社がWACCを下回る利益しか出せていなければ、投資資金を集めることが出来ません。
ベンチャーキャピタルから出資を検討されている方は、自社のWACCについて、一度計算してみてはいかがでしょうか?
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